1. UnderstandingTTP
  2. TTPについて
  3. 体内で起こること

体内で起こること

正常な血管内で起きていること

血管内を流れる血液には、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞のほか、血漿(けっしょう)と呼ばれる液体部分には様々な成分が含まれ、酸素や栄養などを運ぶ、外敵や異物から体を守る、正常な血流を維持するなど、たくさんの役割を分担して担っています。

血小板は傷からの出血を止めるために血栓をつくる1)

血小板は、傷からの出血を止める必要があるときに血栓をつくって傷口をふさぐことで、正常な血流の維持に重要な働きをしています。この血小板が血栓を形成するには、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)という長い鎖のような成分の助けが必要です。
血管が傷つくと、VWFが傷口に結合し、その長い鎖が血液中を流れる血小板とくっつきます。血小板はVWFを足場として傷口に付着すると、くっつきやすいトゲトゲの形に変化し(活性化)、他の血小板を集めて互いにくっつき血小板の塊(血小板の血栓)となって傷口をふさぎます。

病的な血栓ができないようにする仕組みがある2)

体には、血液中に病的な血栓ができないようにする仕組みも備わっています。
血管で産生されたばかりのVWFは非常に鎖が長く、血小板とくっつきやすい性質をもっていますが、血液中ではADAMTS13という酵素に速やかに切断されていきます。切断されて短くなったVWFは血小板とくっつく性質が弱くなるため、血栓ができにくくなります。
ADAMTS13はVWFを小さく切断することで病的な血栓ができるのを防いでいるのです。

健康な人の血管内(正常な ADAMTS13活性がある)

健康な人の血管内(正常な ADAMTS13活性がある)イメージイラスト

松本雅則. 臨床血液. 2021; 62(5): 480-485.

VWFは速やかにADAMTS13に切断されて短くなるため、血小板がくっつくことは少ない。

後天性の血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の血管内で起きていること2)-4)

後天性TTPでは、免疫系が誤ってADAMTS13を攻撃する自己抗体を産生してしまいます。血液中の自己抗体がADAMTS13に結合するとADAMTS13は酵素としての働き(活性)を失い、VWFを切断することができなくなります。
自己抗体によってADAMTS13活性が低下した後天性TTP患者さんの血管内では、VWFの長い鎖がいつまでも残って血小板とくっつき、特に細い血管にたくさんの血栓をつくってしまいます。
また後天性TTPでは、血液中の赤血球がVWFの長い鎖にぶつかったり、血栓で狭くなった血管を通り抜けたりするときに壊れることが増えていきます。血栓がたくさんでき続けると、血液中の血小板が血栓に消費されてしまい、血小板は不足するようになります(血小板減少といいます)。

後天性TTP患者さんの血管内(自己抗体によってADAMTS13活性が低下)

後天性TTP患者さんの血管内(自己抗体によってADAMTS13活性が低下)イメージイラスト

松本雅則. 臨床血液. 2021; 62(5): 480-485.

VWFがADAMTS13に切断されないため血液中に長い鎖のVWFが残り、血小板がくっつきたくさんの血栓ができていく。また血栓やVWFによって赤血球が壊れていく。

ADAMTS13活性の低下が引き起こす影響3)4)

TTPでは、血液中のADAMTS13活性が低下してVWFの長い鎖が増える結果、血小板血栓の形成、赤血球の破壊、血小板の減少などが引き起こされ、体に様々な症状や障害があらわれます。
脳卒中や心筋梗塞などの深刻な臓器障害が起こる可能性もあるため、できるだけ早く治療を受けることが大切です。

体内で起こること

血小板血栓の形成
血栓によって血流が妨げられる
赤血球の破壊
赤血球が不足し酸素を十分に運べない
血小板減少
出血が止まりにくい

あらわれる主な症状、障害

  • 脳:頭痛や精神・神経の症状
  • 心臓:胸の痛みや虚血性心疾患
  • 腎臓:蛋白尿・血尿
  • 腸管:腹痛・下痢
  • など
  • 溶血性貧血の症状:皮膚や白目が黄色くなる、立ちくらみ、めまい、息切れ、動悸、ふらつき、疲れやすいなど
  • 出血の症状:皮膚のあざや斑点(紫斑、点状出血)、歯ぐき・鼻・消化管などからの出血、切り傷の出血が止まらないなど

障害を受ける主な臓器

脳や心臓、腎臓に血栓ができると、脳卒中や心筋梗塞、腎不全などの深刻な臓器障害が起こる可能性があります。また、血が止まりにくくなるため、皮膚にあざや斑点があらわれます。

TTPの症状について詳しく知る

TTPの症状

文献
  1. 1) 安部涼平. Hospitalist. 2019; 7(3): 431-436.
  2. 2) 松本雅則. 臨床血液. 2021; 62(5): 480-485.
  3. 3) Joly BS et al. Blood. 2017; 129(21): 2836-2846.
  4. 4) Scully M et al. Br J Haematol. 2012; 158(3): 323-335.

MAT-JP-2201210-2.0-12/2023 最終更新日:2023年12⽉20⽇